では、下請企業の売上拡大のためにはどのような方策が求められるのでしょうか?

 一つの方向性として、自社製品の開発や販売を進めていくことで下請的な性格を弱めていく「脱下請」が考えられます。しかしながら、これまで特定の取引先企業からの受注に依存してきた下請企業が、独力で一から営業を行ったり販路を開拓したりすることは容易ではありません。このため「脱下請」を急激に進めることは、多くの下請企業にとって必ずしも現実的な方向性とはいえないのです。

 もう一つの方向性として、下請企業としての競争力を高めつつ、取引相手を増やしたり、受注領域を拡大したりすることがあげられます。こうした方向性は、下請的な性格を弱める「脱下請」に対して、下請的な競争力をむしろ高めるという意味で「強い下請」を目指すこととなります。

 「強い下請」を目指すための戦略は、技術力、柔軟性、提案力といった下請企業に求められる3つの競争優位性を軸に以下の7つにまとめられます。

 まず、技術力に関連した戦略としては、①独自技術の開発、②生産技術の高度化、③一貫生産体制の確立があげられます。柔軟性に関連した戦略としては、④少量生産体制の確立、⑤短納期生産体制の確立があげられます。提案力に関連した戦略としては、⑥新製品開発や既存製品高度化に関する提案機能強化、⑦製造プロセスに関する提案機能強化があげられます。

 そして、「強い下請」を目指すための戦略を遂行するには、その基盤として製造設備や人材という自社の経営資源の継続的な蓄積が求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)