すでにiPS細胞で事業化を進めている企業を見てみましょう。

 ニコンは画像処理でiPS細胞の品質を見分ける技術、島津製作所は、iPS細胞から作った目の細胞を再生医療に使える品質にそろえながら培養する装置を開発しています。富士フィルムは細胞集合体を移植し、動物の血管を形成する実験に成功しています。日立製作所は角膜や食道の再生医療に使う細胞の自動培養に成功し、川崎重工はロボットで自動細胞培養装置を開発中です。大日本住友製薬、第一三共、アステラスなど大手製薬会社も新薬候補の研究を活発化しています。

 産業用ガスメーカーの大陽日酸はiPS細胞を凍らせて保存する装置を実用化する準備に入っています。国立成育医療研究センターと凍結・解凍技術を共同で開発しています。大量のiPS細胞を備蓄しておくと素早く治療に取りかかれますので、優れた凍結・解凍技術が欠かせないものです。

 また、13年中には理化学研究所のチームが「加齢黄斑変性」という視力が失われる病気に対していち早く実用化を進めています。患者のiPS細胞から網膜組織を作り出して目の細胞を作り、移植するというものです。病院の倫理委員会で議論しており、承認されて国が認めれば世界で初めて人に応用する技術となります。

 国はiPS細胞を用いた医療を世界のどこよりも早く実用化するために、薬事法の改正を含めた法整備や規制緩和の議論を本格化させています。この分野は関連する産業も多く、今後も目が離せないでしょう。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)