資産家には年の瀬、「財産債務明細書」が送られてきます。年間所得が2千万円超と見込まれる富裕層に対し税務署が毎年発送する書類です。
これを受取った人は、12月31日時点の所有財産や借金について、その種類や金額を記入し確定申告書と一緒に提出しなければなりません。

 この財産債務明細書に記入する内容は、12月31日現在で所有している土地建物、山林、現金、預貯金、有価証券、貸付金、受取手形、未収入金、1点10万円以上の書画・骨董・美術工芸品、貴金属類、自動車や家具などの一組の価額が10万円以上の家庭用動産といった財産、そして、借入金や支払手形、未払いの税金などの債務です。
 何も悪いことをしていなくてもこれだけの「個人情報」を記入して税務署に提出しなければならないため、納税者にとっては面白くない話ですが、税務署にとっては調査に行かなくても情報が入って来る“自主タレコミ”のようなものです。提出された財産債務明細書は、確定申告書に記載された申告所得とのつじつまが検討されるなど調査対象の選定シーンで有効に活用されます。昨年まで所有していた土地や有価証券などの高価な資産が今年の明細書に載ってこなければ、現金化された可能性も含めてチェックが開始されることになるわけです。

 ちなみに、この明細書が届いても、所得税の確定申告書を作成した結果、年間所得が2千万円以下なら提出する必要はありません。しかし、逆に明細書が届いていなくても年間所得が2千万円超なら税務署に明細書を取りに行って提出する必要が出てきます。
 財産債務明細書は、所得税法232条で提出が義務付けられてはいますが、仮に提出しなかったとしてもペナルティがあるわけではありません。
<情報提供:エヌピー通信社>