神奈川県が独自に条例で制定した「臨時特例企業税」(臨特税)をめぐって、いすゞ自動車が納付済みの「臨特税」など合計約19億8千万円の返還を求めた上告審で、最高裁は3月21日、「臨特税」を適法とした東京高裁の二審判決を破棄、「条例は無効、課税は違法」とするいすゞ側勝訴の判決を下し、県側に全額の返還を命じました。返還額は還付加算金相当額を加えた約26億9千万円となります。裁判は、臨特税を定めた神奈川県の「条例」と、法人事業税での欠損金繰り越し控除を認めた「法律」(地方税法)との整合性が争点でした。上告審判決は、「法律」が「条例」よりも〝上位〟にあると、あらためてジャッジしたかたちで、これにより県側の敗訴が確定しました。自治体が独自に定めて課税する法定外税について、最高裁が無効・違法と判断したケースはこれまでに例がないとみられています。

 平成20年3月の横浜地裁判決では「臨特税の課税は欠損金繰り越し控除を定めた地方税法の趣旨に反し違法」として、いすゞ側の訴えを認めましたが、同22年2月の東京高裁判決では「臨特税は欠損金繰り越し控除前の所得に課税するもので、法人事業税とは別の税目として併存し得る」とされ県側が逆転勝訴。上告審判決は再逆転判決となります。上告審弁論で、「政府も臨特税は国の租税政策に反しないと判断している」などとした県側の主張通りだとすれば、「条例による課税は適法」とする「国の判断」も認められなかったことになります。

 地方税法では、単年度で黒字の企業でも過去の損失を繰り越せば、法人事業税の課税対象から累損を控除できるとしています。「臨特税」はその控除分(欠損金相当額)に課税するというもので、平成13年に導入され、同20年度末(21年3月31日)に廃止されるまで約480億円の税収があったといいます。神奈川県内に事業所を置く資本金5億円以上の企業を対象としていました。条例失効までに課税対象となった企業は約1700法人とみられ、返還総額は還付加算金相当額を含めて約635億円となる見通しです。
<情報提供:エヌピー通信社>