政府は、財政難の厚生年金基金に対して、厚生労働大臣が「解散命令」を発動できることを柱とする「公的年金制度の健全性及び信頼性の確保のための厚生年金保険法等の一部を改正する法律案」(厚生年金保険法改正案)を閣議決定し、今国会での成立、来年4月からの施行を目指しています。これにより、「基金」が解散に追い込まれた場合には、国へ返還する資産について、母体となる企業が肩代わりしなければならない可能性も出てきました。税理士・会計事務所としても、顧問先企業が「基金」の解散に伴う〝穴埋め〟によって、経営悪化を招くような事態は避けたいところです。

 厚生年金の支払いを担保できるだけの原資を確保している基金には存続を認める一方で、国に代わって運用している厚生年金の一部が「代行割れ」となっている基金は厚労相の命令で解散させます。また、代行割れをしていなくても、法施行から5年経過時に基準額を満たす資金がなければ解散を促し、自主的に解散しない場合には厚労相が解散命令を出せるようにします。厚生年金基金の受給者と加入者は合計で約730万人(平成23年度末)にのぼりますが、全国約560基金のうち約4割が代行部分の積立金が不足する「代行割れ」に陥っています。

 中小企業が加入する厚生年金基金は、同業種・同地域などの事業所が集まって構成されているため、仲間の企業が倒産した場合には、その返済分までをほかの企業が連帯して負う必要がありました。法案ではこの仕組みを廃止し、「厚生年金」の資金で補填するとしています。「代行割れ」の基金が解散する際には、国への資産の返還は母体企業が背負うことになります。このため、中小の事業者で組織された基金の場合、加入企業の一部が倒産すると残った企業が肩代わりをしなければならない現行の制度が足かせとなって、解散したくてもできない状況が続き、結果として「代行割れ」の部分が拡大する要因ともなっていました。また、こうした基金では、母体となる中小企業が国への資産返還を背負うことが困難なため、基金解散による負担が重くのしかかるかたちでの中小企業の経営悪化が危惧されています。
<情報提供:エヌピー通信社>