企業にとって、秋入学は好機にもなります。秋入学で留学の壁が低くなると、大学では、世界各国の人材が従来よりも頻繁に行き来することが予想されます。これにより、企業はグローバルな視点を持った学生との接点が増え、より採用しやすくなるでしょう。

 人材の多様化にはさまざまなメリットがあります。商品開発では、海外現地のニーズを従来以上に把握しやすくなり、現地の消費者に受け入れられやすい商品やサービスを提供できることにつながります。加え、現地特有の商習慣などを理解しやすくもなります。

 こうしたメリットから、産業界では秋入学への移行について、歓迎の姿勢を示してきました。2011 年6月、経団連は「グローバル人材の育成に向けた提言」を発表し、留学生受け入れの強化を提言しています。

 ただし、秋入学が実施されるとなると、企業は採用をはじめ人材に関するさまざまなルールを見直す必要が出てきます。現在のところ、各大学とも混乱を避けるため当面は卒業時期が春になる暫定案を提示しています。ただし、完全に移行となると、学生は4年の夏に卒業を迎えるため、就職活動の時期も変わるでしょう。また、職場環境では、海外で生まれ育った人については食習慣や宗教などの違いへの配慮、そして持てる能力を十分に発揮できるような体制づくりが必要です。そのほか、評価制度も含めて新しいルール作りの必要性も出てきます。

 秋入学という大きな変革は、企業にとって負担になる部分があります。その一方で、積極的に対応することで、結果として企業は国際競争力の向上が期待できます。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)