今日、地域資源を活用した産業振興が求められる中、漁港に隣接する地域では水産物を活用した産業振興が不可欠となっています。こうした地域の多くでは、水産関連産業の振興を狙いとして「お魚センター」と呼ばれる水産商業施設が建設されています。しかし、それらの多くは、来客数の減少により厳しい状況に置かれており、地域産業振興においてその役割を充分に果たしているとは言い難い状況となっているのが現状です。

 多くの「お魚センター」に共通する1つ目の問題点として地元顧客の利用の少なさがあげられます。顧客層は中高年の観光客が中心であり、地域住民の利用割合は低くなっています。このため、売上がゴールデンウィークや夏休み期間などの観光シーズンに集中しており、売上の波が激しくなります。また、「お魚センター」の近隣には大型ショッピング施設などが立地していることが多いため、地域住民は魚だけを販売している「お魚センター」にはほとんど行かず、このことが地域住民の「お魚センター」への愛着低下につながっているのです。

 また、2つ目の問題点として地域全体でのビジョンの欠如があげられます。「お魚センター」を活用したまちづくりに関するビジョンが地域全体に共有されていないため、産学官との連携が十分に行われない状況が生まれ、結果として「お魚センター」がその地域の産業振興やまちづくりにおいて十分な役割を果たしきれていないのです。

 このように、水産商業施設を産業振興に活用するには、施設を中核として地域全体の産業振興をどのように図るかといった「まちづくりの視点」が求められるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)