最近、政府が論議している限定正社員とはどのような制度でしょうか。政府の産業競争力会議や規制改革会議でルールの整備が提案されています。アベノミクスの経済政策の1つでもあります。

◆正社員との違い
 普通の正社員は、転勤や残業や職種の変更を受け入れる事を前提にしていますが限定正社員とは勤務地、職種、労働時間等を限定した社員を指します。派遣社員やパートタイマー等の期間限定とは違い無期雇用であり、待遇は一般的には有期雇用よりは良いが、賃金面では正社員より低いというケースが多いでしょう。すでに銀行や小売業で大企業の半数が導入しています。勤務地限定無しは総合職の正社員で限定有は一般職と言う雇用形態で導入されている企業も多く、一般職は女性で勤務地は限定され、待遇は総合職より賃金が低いというケースは良くあることです。

◆労働者と会社の合意で成立する限定正社員
 転勤や時間外勤務が無い限定正社員は子育てや介護と両立がし易く、仕事も同じなら専門性も高めやすいという面もあります。正社員であっても一時期は限定が良いと言う場合もあるでしょうし、限定で入っても勤務が可能になったら正社員に移ると言う場合もあるでしょう。各々のライフスタイルで移れる柔軟な制度があっても良いのかもしれません。
 政府の趣旨は、非正規で働く有期雇用の人達の雇用安定を計る為、あるいは女性の子育て期の離職率を下げる為、家族介護もし易い為等の考えがあります。しかし経営側から見ると良い人材には残って欲しい半面、無期雇用にする事は人件費の面で二の足を踏む経営者も少なくありません。

◆限定正社員は解雇しやすいのか
 もうひとつの側面、その限定された職種や勤務地での雇用継続が困難な場合には解雇が容易になるのかと言う問題があります。
 例えばある事業所で非正規社員を限定社員にした後、経営環境が悪化して事業所閉鎖をした場合、勤務場所を限定していれば正社員よりは解雇し易いでしょう。こうなると正社員を限定にして事業所閉鎖で解雇をし易くすると言う考え方も出てきて、権利の濫用と扱われるかもしれません。今後の動向に注目して行く事が必要でしょう。