では、地域として当たり前に存在すると思われていたものを価値ある資源として捉えなおすには何が必要なのでしょうか。愛媛県今治市に所在しタオル製品の企画、製造販売を行うA社の取組事例をみていきましょう。

 今治市は、国内シェア約6割の日本一のタオルの産地です。しかし、安価な輸入品との競合を余儀なくされ、タオル関係の事業所は減少の一途を辿り、1970年代に500社ほどあったといわれるタオル関係の事業所数は、現在120社を下回る程度にまで減少しています。

 A社は、今治市にあるタオル製造業者B社が、タオル生地を生かした新製品の企画・販売を行うために2000年に設立しました。その中で、タオルのもつやわらかさや肌触りの良さに着目し、タオル生地を用いたベビー用品や和雑貨を開発し全国への販売を展開していきました。そしてこうしたA社の取組みは今治市の他の企業へと波及していったのです。

 その過程では、今治のタオルの価値について、四角いタオルとしての機能だけでなく、やわらかさや肌触りに価値を見出すといった地域資源への新たな気づきがあった訳ですが、それには、A社の社長がタオルづくりに関して素人であったことが関連しています。

 A社の社長には、タオル製造業者B社の社長夫人が就任しました。その背景には従来のタオルづくりの発想から離れ、主婦や消費者の目線から製品企画を行うという狙いがあったのです。

 このように、中小企業が地域資源に対して新たな気づきを得るには、従来の発想に囚われない人材をうまく活用することが求められるのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)