記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター

 

 

 貸借対照表には資産価格が金額で表示されています。すべての資産について、貸借対照表に計上されている金額をそのまま額面通り受け取ることは危険です。資産の中には価格変動リスクを有する資産があるからです。

 資産の分類方法にはいくつかあります。代表的なものに流動資産と固定資産の分類がありますし、営業資産と非営業資産、あるいは、金融資産と非金融資産といった分け方もあります。資産は原則的に取得原価で貸借対照表に計上されますが、価格変動リスクという観点で重要なのは、資産の回収金額が取得原価で確定しているかどうかです。

 資産の中で取得原価(貸借対照表計上価格)どおりに、最も確実に回収できるのは言うまでもなく現金預金です。その他、受取手形、売掛金、貸付金などは契約により回収元本が確定している資産です(こうした資産をここでは「元本確定資産」と呼ぶことにします)。一方、たな卸資産、土地、建物、株式などといった資産は、元本を回収しようとすると時価による売却になりますから、取得原価とは異なる価格で回収されます(これを「価格変動資産」と呼びます)。

 受取手形などの元本確定資産も相手先の倒産などがあれば、当初約束された元本が回収できない可能性がありますから万全ではありませんが、そうしたことがない限り、貸借対照表に計上されている価格で回収できます。ところが、価格変動資産については元本回収という観点からすれば、貸借対照表価格はまったく意味を持たない過去の価格です。価格変動資産は常に時価の変動にさらされている資産になります。(つづく)