時価会計は、いつの時代も変わらぬ会計の大きなテーマです。IFRS(国際会計基準)でも時価会計が一層強化されるようになっており、その是非が盛んに論じられています。ここでは小難しい会計理論ではなく、実践に沿った「経営にとっての時価会計」ということを考えてみましょう。

 取得価額(簿価)100の上場株式の時価が50だとします(配当等の収入はありません)。時価で評価すれば50の評価損が生じますが、時価主義ではなく取得原価主義であれば、決算書に評価損は計上されません。

 時価会計であれば、所有していても50の評価損を計上しなくてはなりませんから、いっそのこと株式を売却して50の売却損を計上しようと発想することができます。しかし、取得原価主義の下では、「原価評価なのだから、わざわざ売却して売却損を出す必要はなく、相場が回復するまでこの株式を持ち続けよう」と考えるかもしれません。しかし、この考え方は誤っています。なぜなら、企業行動の目的は将来キャッシュフローの最大化であり、企業は将来キャッシュフローを最大化すべく事業活動を行わなければならないからです。さきほどの例における株式所有の継続というのは、将来キャッシュフローとは何の関係もない、会計上の損得から導き出された行動パターンに他なりません。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)