公正取引委員会は4月23日、納入業者からの消費税分の仕入れ価格への転嫁を拒否したとして、東日本旅客鉄道(JR東日本)の子会社に業者負担分の支払いや再発防止を勧告しました。昨年10月に施行された「消費税転嫁対策特別措置法」に基づく処分で、初めての〝社名公表〟です。

 勧告を受けたのは、JR東日本ステーションリテイリング(東京・港区)。売上高は100億円以上の大規模小売業者で、東京駅や品川駅などJR5駅で商業施設「エキュート」を運営しています。食品や雑貨などの納入業者は、施設内に店舗を設け、商品の販売価格の一定割合を「仕入れ代金」として受け取っています。

 公取委によると、同社は消費税率が8%に引き上げられた4月1日以降、売上高の減少を防止するためにセールを企画。昨年11月と12月に全納入業者161社に文書で企画の参加を要請しました。商品の納入業者に価格の引き下げを要求していたのです。

 具体的には、各店舗に対して販売価格を3%以上引き下げた商品を1商品以上販売するという「生活応援バザール」を行うように要求。そのほか、4月15日から6月30日まで商品の増量などで既存商品よりも3%~5%程度割安感を演出する「クオリティプライスキャンペーン」に参加するよう要請していました。

 公取委は、これまで消費税の転嫁拒否について社名の公表はしない「指導」にとどめてきましたが、同社は値下げ分を業者に負担させており、また同社の売り上げ規模や納入業者数を考慮し、特別措置法第3条1号の納入業者に値引きを迫る「買いたたき」の規定に違反すると判断し、社名公表に踏み切りました。
<情報提供:エヌピー通信社>