今後、海洋エネルギー発電は国と自治体、民間企業、大学などが協力し、実証実験をすすめることになります。実験に手を挙げた県は、岩手県のほか、新潟、和歌山、佐賀、長崎、鹿児島、沖縄です。誘致が決まれば実証実験がはじまり、設備の建設をはじめ、数多くの事業が行なわれ、関係する企業などにも収益をもたらします。また、雇用創出の恩恵も期待できます。

 たとえば、岩手県は釜石市沖で波力と洋上風力を組み合わせ、実証実験に臨む予定でいます。岩手県の場合、県外の複数の企業から参画の意向が寄せられており、地元の人たちは実証実験が実現することで県内に多くの企業や人材が集まり、これが震災復興に役立つ、と期待しています。こうしたことから、名乗りを挙げた自治体は積極的に誘致に取り組んでいます。

 未来の再生可能エネ候補として期待されている海洋エネルギー発電ですが課題もあります。最大の難題は、漁業への影響をいかに小さくするかにあります。潮力発電は、潮の流れが速いほうが多くのエネルギーを得ることが可能です。ただし、潮流の速いところは漁業も盛んなことが多く、発電施設の建設による漁への悪影響が懸念されます。今後は、地元の人たちと話し合いを根気よく重ねて調整しなければなりません。

 そのなか、すでに漁業者との協力体制をつくった自治体もあります。佐賀県は、誘致のために立ち上げた協議会の会長に地元漁協の代表が就任し、海域も漁業者側に推薦してもらっております。海洋エネルギー発電には課題はありますが、地元との協力体制などによる課題解決は不可能ではないことを示しています。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)