では、京都では産業集積の特徴を生かして、近年どのような取組が行われているのでしょうか。

 京都における産業支援機関による支援の背景に「知恵産業」という言葉があります。知恵産業は、文化と伝統に裏打ちされた京都ならではの特性や強み、いわゆる「知恵」を存分に生かした各種の事業を通して、京都の産業に革新と創造を呼び起こし、京都を知恵溢れる創造性豊かなまちとしていこうとするものです。2008年には「知恵産業研究会」が立ち上げられ、2010年11月には、京都市産業技術研究所内に知恵産業融合センターが設立されました。

 知恵産業融合センターの活動の基本的な考え方は、京都が伝統産業と先端産業のまちであることに鑑み、両者を融合させて新たな価値を創出することで地域産業振興を図ろうとするものです。具体的には、①京都市産業技術研究所を核とした中小企業との産学官連携の推進により知恵と技術を集約する、②京都の他の産業支援機関と連携して知恵産業を探求し、特に技術面からのサポートを行う、③企業連携を推進しながら、シーズからニーズまで一貫した知恵ビジネスの集積を実現していく、などの活動方針を掲げています。そしてこうした方針の下で、同センターでは、研究開発支援、企業間マッチングの推進、人材育成、情報発信という4つの取組が行われています。

 このように京都では「知恵産業」に基づいて、個々の企業の努力に依存した産業発展ではなく、業種、業界、企業を超えた協働によって京都府、京都市などを含めた「オール京都」での取組が推進されているのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)