●取り返しのつかない重大不祥事

 今度のフォルクス・ワーゲン社(VW社)の、排気ガスのごまかし問題で、日本では“驚き”を以て見られている会社がある。なぜなら、「この車の排気ガスはごまかしだ」と見抜いたのは、なんと京都に本社を置く堀場製作所の「ポータブル測定器」だったからだ。

 米当局が、堀場製作所の自動車計測事業戦略室の中村博司室長に、VW社の自動車に不正ありと、第一報を入れた。

 エンジニアとして、中村氏が入社したのは03年だった。

 当時は創業者の堀場雅夫氏が健在で、社是は「おもしろ おかしく」だった。その雅夫氏の下で、今回のポータブル測定器の開発に取り組んだという。

 参考にいえば、自動車の排気ガス測定器の分野では、世界シェア7割という。

 もちろん見破るのが目的ではなかった。純粋な排気ガス測定のためだった。

 というわけで、中村室長は、この事件で誇らしげな気分はなく、「重責を担っている」という責任感が大きく膨らんでいるという。

 この事件以来、近くにVW社の営業所があるが、これまで土日は商談客が多かったが、それもすっかり姿を消し閑古鳥が鳴いている。逆に株価も上がっているのが堀場製作所である。

 何れにしろ、車の名門ドイツ車に、取り返しのつかない汚名を残したことになる。

 堀場製作所の堀場雅夫さんは、ベンチャー・ビジネスの草分けで、1978年には53歳の若さで代表取締役を辞した人でもある。持論はこうである。

 「人生の能力・知力・経験・体力を、全部かけ合わせたものがピークなのが、40代である。50代になると、それらは少しずつ落ちて来る。後継者は40代が一番いい。ワンマン社長の首を切るのは自分本人しかいない」

 そう言って、自ら進んで代表取締役を降りたのである。惜しまれつつ、2015年7月14日に90歳で永眠。ほんの最近のことである。

 堀場製作所には、この創業者の遺伝子が脈々と伝わっていそうである。「おもしろ おかしく」「イヤならやめろ!ただ本当にイヤだと思うほどやってみたか?」経営する遺伝子が、脈々と受け継がれているのだろう。