ノーベル賞を受賞した山中教授が作り出したiPS細胞の研究は、患者の治療に使う臨床研究や、難病の薬を開発する国のプロジェクトが始まるなど、実用化を目指して本格化しています。具体的にiPS細胞に期待がかけられているのは、新薬開発への応用と再生医療です。心臓や肝臓といった臓器が機能不全を起こした場合でも、iPS細胞ならそれぞれの臓器の細胞に成長させることができます。今日のような臓器移植手術では、他人のものを移植するため拒否反応が心配ですが、iPS細胞は自分の細胞なのでその懸念が薄まります。

 政府もこの分野では積極的な規制緩和政策をとり、新たな事業も創出されようとしています。国がiPS細胞を用いた医療の実用化に熱心になればなるほど、iPS細胞以外のバイオ領域の事業環境も整えられると考えられ、2013年はiPS細胞のおかげで日本バイオ業界は事業環境のインフラ整備が進む、追い風の環境となるでしょう。

 再生医療の切り札とされるiPS細胞の関連事業を立ち上げる企業も出始めました。文部科学省の予測では、移植を伴う本格的な医療への応用は2020年代に入ってからとまだ先ですが、それでも新薬や病気の研究にいち早く応えるため、医療関連企業だけでなく、細胞の保管装置や培養材料といった精密機械メーカーや分析機器メーカーなど、波及する産業は多くあります。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)