最初に。
ちょっと今回は、用語やら考え方やら専門的な話ですので、ご注意ください。読むのが難しいとお感じになられた方、すみません・・・。

 一般的に、認定申請についてのハードルは、第一に公益目的事業の判定・まとめ方、第二に各財務基準をどうやってクリアするか、という二点に絞られてくるのですが、別の難しさを感じることが最近よくあります。
 というのは、今回の公益法事制度改革では、今までの資金収支の考え方から損益ベースの考え方への転換が求められている、という点から来るものです。
 これは、いわゆる自治体の会計から企業会計への転換、ということになるかと思います。
 したがって、この転換を理解していただくのが特に難しいなあ、と感じるのは、自治体の外郭団体、つまり、自治体から補助金をもらって運営している、かつ、その団体の最初の財務体系を作ったのが自治体であろうと推測される団体です。
 このような外郭団体は、例えば収支予算書を作ってこられる時に、必ずと言っていいほど、収支がぴったりゼロの予算書を作っていらっしゃいます。  話に聞くと、「当初予算では収入を少なめに見積もって収支ゼロにし、途中の補正予算で実際の支出に合わせて収入を増加させた予算を組み、最後の補正予算(大抵は予算と言いながら、決算期ぎりぎりに作成)において、特定資産の積み増しなどを行って次期繰越収支がわずかに出るくらいにする」という、企業会計に慣れた者にはなかなか理解しがたい作りになっているようなのです。まあ、今までの公益法人の指導監督において、次期繰越収支がいわゆる内部留保の重要な判断基準になっており、ご存じのように「内部留保をしてはいけない」というのが、主務官庁の指導の柱だったのですから、当然といえば当然かもしれません。

 ところが、今回の公益認定申請書はまず予算書ベースで申請書を作成しなければなりません。公益法人に移行した後は、財務基準などもすべて決算の数字で判断していくことになるのですが、とにかく、申請は予算・計画ベースです。しかも、企業会計における損益計算書をベースとした、損益ベースでの予算書です。

 資金収支ベースの予算書と損益計算ベースでの予算書の大きな違いは、主に
① 資金収支では支出(費用)となる特定資産の積み立てが、損益ベースでは単なる資産の振替となるため、費用(支出)にはならない
② 一定額以上の固定資産の購入が、資金収支では支出(費用)になるが、損益ベースでは費用にならない
③ そのかわり、損益ベースでは購入した固定資産の減価償却費という形で費用が発生するが、減価償却費は実際に資金が外に出ることにならないため、資金ベースでは支出(費用)にならない
というような点があげられると思います。

 さて、そこで話は戻って、これらの外郭団体さんの作る当初予算を元に申請書を作ると、まず間違いなく問題になってくるのは③になります。というのも、①や②は、途中または決算ギリギリの補正予算で入ってくる項目で、とりあえず、幸か不幸か当初予算に「特定資産の積み立て」や「固定資産の購入」が載ってくることはあまりないからであります。
 そして、これらの外郭団体さんに「今回の予算書の数字は損益ベースなので、減価償却費を見積もって計上してください」と言うと、かなり抵抗されます(笑)。

 なぜなら、最初に書きましたように、当初の予算は収支ぴったりゼロで作られています。ということは、ここに新たに減価償却費という項目を入れると、間違いなくマイナスの予算になってしまいます。外郭団体の方にとっては、このマイナス予算というのはありえないことなんですね。
 けれども、どんなに難色を示されようと、申請書でのベースとなる予算に減価償却費は入れざるを得ません。もちろん、決算で減価償却費が出るならば、の話ですが、減価償却費は、収支相償・公益目的事業比率・遊休財産、すべての基準に関係してきます。入れなければ、申請段階で行政庁から必ず指摘されます。団体の都合で計上しない、ということはできないのです。