札幌の税理士 溝江諭(みぞえさとし) です。


 前回、私は裁判員制度の日当等について、「本来、労働の対価であるから給与所得となるが、実費弁償部分は当然に非課税とされ、これを超える部分が給与所得を構成する。」と考えるべきではないかと書きました。皆さんはどのように思われますか?
 (参考条文:所得税法第9条1項4号「給与所得者の出張等の非課税」で、出張等に通常必要な部分は非課税とされ、それを超える部分が給与所得とされている。)
 
 では、国税庁はなぜ最高裁判所からの照会内容をそのまま認め、「雑所得」とすることについて「その通りでよい」と回答したのでしょうか。
 
 以下は、その原因についての私の個人的な推測です。
 
実費弁償部分の算定が難しい。例えば、事業者や給与所得者について逸失利益の金額をどうやって算定するのか、ということです。ただ、やろうと思えば計算できないこともありません。だから、原因としてはちょっと弱いかな。
給与所得に該当させることとなると、不都合なことが生じる。それは、実際にかかった交通費や宿泊費等の「経費控除」を認めて、その控除後の金額を給与収入とすると、さらにその金額から「給与所得控除」を受けることができるので、「経費控除」と「給与所得控除」という二つの控除の重複適用を認めることになるからです。
 
 私としては、②が日当等を「給与所得」とできなかった原因のように思われます。さらに根源を検討すると、そこには「給与所得控除額」が実額ではなく、画一的な概算額であることに行き着きます。すなわち、現状の「給与所得控除額」とは果たして何を根拠とした制度なのかという問題に突き当たるのです。
 
 所得税法では、所得を10種類に分け、各所得の金額計算については、原則として次のように算出することになっています。
 
 所得金額=収入金額-必要経費(または収入を得るための支出額)
 
 ところが、給与所得の計算式は次のようになっています(公的年金等の雑所得も同様です)。
 
 給与所得金額=収入金額-給与所得控除額
 
 上記2つの計算式の決定的な違いは、控除項目である「必要経費」は実額であるのに対し、同じ控除項目でも「給与所得控除額」は実額ではないというところへ行き着きます。すなわち、給与所得には実額による必要経費という概念がないことによります(所得税法第57条の2①に特定支出控除の特例がありますが、認められている支出項目があまりに限定的で、実際はほとんど使われていません。)。
 
 もし、裁判員制度の日当等を給与所得に分類すると、給与所得控除の法的性質が問題となり、その問いに正面から答えなければならないこととなります。今まで、法的性質をあいまいのまま使用してきた給与所得控除にメスを入れなければいけないこととなる訳です。課税庁としてはちょっとやっかいですね。そこで、便法として、これらの日当を「雑所得」に該当するものとしたのではないでしょうか?
 これならば、給与所得控除の法的性質を問題にする必要もなく、さらには、給与所得に必要経費として広範囲の実額控除を認めよという要求にも答えなくて良いからです。
 
 これが、今回のちょっとした「ミステリー!?」に対する私の考え方です。私としてはこれでちょっぴりスッキリしましたが、皆さんはいかがですか?
 
 ちょっと考えすぎかも知れませんが、サラリーマンにも確固たる納税意識を持ってもらうためには、会社頼みの年末調整制度をやめて、各人が必ず確定申告するという「所得者皆申告」制度にすべきだと考えている私としては、給与所得算出の際の「概算額による給与所得控除」についても一考し、「他の所得と同様に実額経費」も導入すべきだと思っています。
 
 さて、昨晩で忘年会が一段落。この1週間で5回。よく、飲んだものです。この辺で、少し、肝臓を休めてあげないと。そう、休肝日ですね。
 今晩は久々に家でゆっくり。そうそう、こんな寒い日には、「かき」と「タチ」入りの鍋をフーフー言いながら突っつくのが最高。そして鍋といえば、やっぱり熱燗!冬の夜の最高の贅沢!
 えっ、「休肝日にならないよ!」 ハイ、確かに・・・・・!?
 
 see you next !
 
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                   札 幌 学 院 大 学   客 員 教授 
                   北海道情報大学大学院 非常勤講師 溝江 諭
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