先日、裁判所で書記官と立話をしていたときのこと、書記官が「最近、未払賃金請求の事件が増えていますね」と言ってきた。確かに、最近私が扱っている(裁判所の仕事もしている)事件の半数以上が未払賃金請求だ。労働者に問題がある場合も少なくはないが、多くの経営者が裁判や調停の場で言う言葉には結構共通点がある。纏めると「会社を辞めるまで残業代のことは何も言わなかったのに...」あるいは「残業代を払っていたら会社はつぶれてしまう」という趣旨のことをだいたいの経営者が不満のように話す。「私達の時代ではあたりまえ(つまり残業手当を請求しないのが普通)だったのに」と言われても、なんの解決にもならない。これほどコンプライアンスをいわれて久しいのに、まだ自分の考えを押し付けることに何の問題も感じていない。労働者は在職中には、なかなか残業手当など請求できないのだ。対応策は、必要労働時間を考えた上で、残業手当を支払ってもいいように残業手当分を考え、はじめから基本給等の金額を低く設定しておき、賃金総額を計画しておくことである。残業手当分を賞与で払うぐらいなら、賞与を減らしてでも残業手当をはらうこと。そうしないと、後から、未払賃金を請求されて、先ほどのように、グチをこぼしても裁判では勝てないのだ。現在の未払賃金請求増大の陰には、弁護士、司法書士の宣伝によるものも多いだろう。税理士のみなさんも、今後の賃金設定は、法的にクリアできるようにしてほしいものだ。