“権限委譲”と同じ意味で使われる言葉に“エンパワーメント”があります。

 経営用語として使われ始めたのは20年ほど前であり、決して目新しくはないのですが、この言葉が今ほど大切な時代はありません。いかにエンパワーメントを理解し経営に活かすべきか、ユニーの事例を通して考えてみたいと思います。

 大型ショッピングセンター「アピタ」と、食品主体のスーパー「ピアゴ」を中心に、234店舗を全国1府19県で展開しているユニーが、2011年2月から、各店舗の運営責任者である店長への権限委譲を進めると発表しました。本部主導を店舗主導に変えることで、地域特性や顧客動向に応じた機動力ある店舗運営を実現し、業績回復を狙うというものです。

 かつて、本部主導の店舗運営が機能したのは、本部が頭脳となって常に正しい判断をくだし、リアルタイムで店舗を監視・指導することができたからです。しかし、店舗の広域化と規模拡大、そして消費者ニーズの多様化による競争激化が、本部主導による統制の限界を越えてしまいました。その克服策が今回のエンパワーメントです。現場の裁量が大きくなれば、顧客視点に立ったサービスや迅速な対応が可能となります。また独自の創意工夫と行動によって社員のやる気も高まり、職場の活性化も期待できるというわけです。こうして見るとエンパワーメントは良いこと尽くめに思えますが、そこにはリスクがあることも忘れてはいけません。(つづく)