今日、「目標管理制度」は日本の企業で一般に活用されていますが、もともとは1950年代に米国でピーター・ドラッカーが提唱した「目標による管理」が出発点になっています。これは「個々の担当者に自らの業務目標を設定、申告させ、その進捗や実行を各人が自ら主体的に管理することで、大きな成果が得られる。」とするものでした。
 日本では、「目標管理制度」として人事制度上の評価に活用され、次のような変遷があり、日本流の活用が進んでいます。

◆目標管理制度の移り変わり
 日本の「目標管理制度」については、企業における活用経験等から様々な論議がありましたが、その主な論点と現状における帰結について整理しますと、次の通りです。
①業務目標は担当者が決めて良いか
 「業務目標を担当者個々人が考えて設定し、自己申告させる方法をとったところ、それらの目標を全部足し合わせても、上位の目標が達成できない。」と言う矛盾が生じ、また、達成しやすいレベルの低い目標を設定する傾向が見られました。
 現状では多くの企業で、戦略目標からブレイクダウン(細分化)して目標を設定する方法をとるようになっています。
②業務目標達成度(成果)だけで評価して良いか
 成果主義の評価を再重要視し、結果に注目して評価したところ、チーム業績が公正に評価されず、目立つメンバーだけが評価される、自分の評価を高めるために、良い情報やノウハウを一人占めにし、仲間に知らせない、などチームワークを低下させる行為がでてきました。また、プロセスの評価を軽視するようになり、業績向上の元になる人材育成がおろそかになる等から業績とプロセス、チームワークを重視するようになりました。
③「絶対評価」か、「相対評価」か
 評価の仕方には、設定した目標をどれだけ達成したかを評価する「絶対評価」と、戦略目標(全体目標)の達成により貢献した方を高く評価する「相対考課」があります。目標を設定して以降、外部環境はよく変化するので、それにうまく対応する努力と結果は多様であり、個人差が生じます。 
 それを的確に評価し、限られた昇給や賞与の賃金原資を公正に、メリハリを付けて支給するには「相対考課」とするのが適切だとする企業が主流になっています。