(「“エンパワーメント”成功の条件! その1」より続く)

 第一のリスクは、店長の裁量拡大による、売り場やサービス面での店舗間格差の拡大です。組織的なコントロール機能の低下が、企業ブランドの統一感を損なうことも起こり得ます。そうならないために必要なことは、企業の価値観や行動規範の徹底です。これだけは外してはならないという確固たる軸を徹底的に店舗に浸透させることによってリスクを回避することができるのです。

 第二のリスクは、エンパワーメントを、単に「仕事を明け渡す」ことと勘違いし、本部がやるべきことまで現場に丸投げし現場が疲弊してしまう可能性です。当たり前のことですが、本部が担うことと現場が担うことを明確に切り分けることが大切です。

 最後にエンパワーメントの必要条件として、リーダーシップスタイルの変革をあげておきたいと思います。これは指示的リーダーシップから、支援的リーダーシップへの転換を意味します。上位者である本部が答えをすべて用意して指示するスタイルから、現場が自ら答えを見つけ出し行動できるよう支援するスタイルへと、本部が自ら変らなければなりません。つまり、上位者である本部が、支援型リーダーシップスタイルをマインドセットし、質問力、傾聴力、示唆力といったコミュニケーションスキルを習得することがエンパワーメントには不可欠といえるのです。

 今後は、益々現場主導のマネジメントが中心となるでしょう。それにはエンパワーメントが必ず必要となります。その成功の決め手は、仕組みと教育の徹底によるリスク回避と、上位者のリーダーシップスタイルの変革にあるのです。(了)