(「長引く円高、為替リスクのヘッジ その1」より続く)

 通貨オプション取引は、一般的には業績悪化の直接的な要因となるものではありません。しかし、通貨オプション契約の中には、契約した決済日において円高・円安のどちらに振れているかによって、取引金額が異なるケースがあります。

 たとえば「円安に振れている場合は100万ドルを取引するが、円高の場合はその倍の200万ドルを取引する」といった契約です。輸入取引自体が100万ドルあるとすると、円安になった場合はすべての輸入取引について円安リスクをヘッジすることになりますが、円高になった場合は、そもそも輸入取引自体が100万ドルしかないため、必要以上の外貨を義務履行価格で購入することになり、差し引き100万ドルは外貨預金として手元に残存することになります。中堅・中小企業の場合、資金に余裕がないことが多く、その外貨を円に転換せざるを得ないとなると、当初契約時の取引価格(1ドル=105円)とその時の市場価格(1ドル=85円)とすれば、その差額(1ドル=20円)に100万ドルを掛けた金額が為替差損として収益を圧迫することになるのです。

 このように円高・円安で取引金額が異なる契約は、為替リスクをヘッジする目的以外に投機的な意味合いが強いものとなり、問題があります。輸出入を行う企業にとって為替リスクを回避することは重要な経営課題ですが、将来の為替変動については予測することは不可能なため、本来の目的を見誤らずリスクに備える必要があるのです。(了)

(記事提供者:アタックス 坂井 啓宏)