同族会社の多くが直面しているのが、「公私混同」の問題です。とくに税務上では、親族への給与の支払いが問題になるケースが少なくありません。
 例えば、会社経営にタッチしている社長の妻への給与。同族会社ではよくある話ですが、そのスタンスはさまざまで、登記上だけで役員となっているケースもあれば、登記上では役員ではないが経営方針の策定から資金計画の決定まですべて妻がこなしているケースもあります。

 法人税法上、従業員に支払う給与は原則として損金扱いとされているため、登記上の「役員」ではない妻に支払う給与は損金算入扱いとしたいところですが、この考えは危険です。
 一般に役員とは、代表取締役や専務取締役、常務取締役などの取締役のほか、監査役、執行役、会計参与、理事、監事などを指します。これは会社法その他法令上の「役員」ですが、法人税法上の役員となると、もう少し範囲が広くなります。

 具体的には、(1)使用人以外のもので実質的に経営に従事しているもの(2)同族会社の使用人のうち、一定の要件をすべて満たす者で、その会社の経営に従事しているもの――などです。そして(2)の「一定の要件」とは、実質的に経営に従事し、①同族判定の基礎となった株主グループに属している②所属する株主グループの持ち株割合が10%超③その使用人(配偶者及びこれらの者の持ち株割合が50%以上である会社を含)の持ち株割合が5%超――を指します。
 つまり、登記簿に記載がなく、会社の株式をまったく保有していなくても、法人税法上では「役員」とみなされる場合があるのです。
<情報提供:エヌピー通信社>