ITを新しいビジネスツールとして捉え改革を進めたA社の事例を紹介します。「多品種微量」といわれる小ロットのバネを製造・販売しているのですが、既存顧客からの受注内容の約7割が、過去と同じ内容のリピートオーダーであることに着目し、自社ホームページ経由によるバネのリピートオーダー対応システムを自社で構築しました。販売先が同社のホームページを経由して直接入力した情報を、同社の既存の基幹システムに連動させているところが特徴です。A社では経営者がリーダーシップをとりつつも、ITベンダーやITコーディネーターなどの外部専門家を加えたIT委員会を月1回開催し、専門家に自社の経営課題を率直にぶつけています。

 中小企業は人的、資金的な制約を有しています。そのなかで情報化を推進するには、まず自社の経営課題や強みを認識し、経営課題の克服や自社の強みを強化するための「ツール」として情報化を推進することが重要になります。必ずしも多額の費用を投じる必要はないのです。既存の基幹システムをベースとし、電子商取引のシステムやそこから得られた情報を連結させることにより、効果を得ることができます。

 IT化を推進することで、生産性向上、リードタイム短縮、発注業務の効率化、在庫削減などの業務効率化を図ることができ、自社が本来強みとする分野に経営資源を集中させることができます。また、業務効率化だけでなく、IT化推進の成果を、製品開発や販路開拓などといった戦略的経営の推進にも活かすことができるでしょう。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)