昨今、永きに亘って存続を実現している老舗の事業承継や人づくりの取組みに注目が集まっています。ここでは老舗における事業承継や人づくりの特徴についてみていきましょう。

 まず、老舗では養子や娘婿などといった実子にこだわらない後継者選びがなされてきました。老舗の多くは、家代々の職業である「家業」からはじまり発展してきました。家業で重要なのは家の存続であり、通常男子がいれば、その内の長男が結婚をして家を継ぐのが一般的です。しかし老舗では子供がいない場合に、家長となる後継者を養子として迎え入れたり、女子しかいない場合には、婿を迎えて結婚させたりする形で後継者選びがなされてきたのです。このように老舗では、養子や娘婿などから優秀な人材を選んで「家」を存続させる方法がとられており、こうした実子にこだわらない後継者選びが老舗の長期的な発展につながったと考えられています。

 また、老舗ではOJT(職場内訓練)による人材育成が行われている点も大きな特徴です。人材育成は10代前半の「丁稚」の頃から行われます。丁稚の主な仕事は雑用など先輩の補助的な作業が中心です。そして「丁稚」の上の「手代」になるとOJTによる人材育成が本格化します。手代には、出納、売買、納品などの商売に参画させることで業務を教え、一人前の業務担当者になるように育成します。そして「手代」から「番頭」になるまでには、丁稚から起算すると20年余りの長い年季奉公を必要とします。このような長期的な人材育成は、老舗が従業員を大切にした人づくりに取り組んできたことを示しているとも考えられるのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)