シェール革命がアメリカにもたらす恩恵に比べると、今のところ日本が享受できるメリットはそう多くありません。天然ガスの価格は、アメリカでは3ドル台(100万英国熱量単位当たり)まで下落したのに対して、日本のLNG(液化天然ガス)の輸入価格は平均15.5ドルで、両国間には約5倍もの開きがあります(2012年末現在、バークレイズリサーチ調べ)。

 なぜ、日本の輸入価格は下がらないのでしょうか。それは、日本におけるLNGの価格は原油相場に連動するよう取り決められているからです。そこで、この状況を変えようと、日本のガス会社や電力会社、商社などは、日本がアメリカから安価なシェールガスを輸入できるように、アメリカとの交渉を始めています。ただし、いまのところアメリカ政府は、日本を含めて自由貿易協定(FTA)を結んでいない国に対して、LNG輸出を認可せずにストップをかけているため実現に至っていません。

 そのなか、商機を求め、始動した日本企業もあります。三菱ケミカルホールディングスはアメリカ化学大手のダウ・ケミカルと提携して、アメリカの地に石油化学コンビナートの構築に乗り出しています。これは現地で直接シェールガスを入手し、製品を低コストで生産するのが狙いです。ほかにも、住友ベークライトなどは採掘に用いる特殊な樹脂の増産を予定しております。また、大手電機の東芝は高熱効率のガスタービンを開発したゼネラル・エレクトリック(GE)と提携関係を構築して、火力発電の事業拡大を図っています。こうしたシェールガスのメリットを巡る企業や国家間での取り組みは今後も増えそうです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)