多くの企業は、その成功の要因となった商品・サービス、技術、販売方法などに固執しすぎることによって失敗します。しかし、永きにわたって経営を維持してきた老舗は、伝統をしっかりと継承しつつも、伝統に安住することなくつねに経営革新をつづけています。

 老舗における経営維持ための秘訣として、「変化させていない伝統」を継承しつつも、「時の流れに対応した変化」を同時に行っている点があげられます。
まず、「変化させていない伝統」についてみていくと、老舗は顧客第一主義、本業重視、品質本位、従業員重視などの基本理念を継承しています。こうした基本理念は、老舗のもつ目に見えない価値観として組織内で継承されています。

 一方で、「時代の流れに対応した変化」についてみていくと、老舗では顧客第一主義の基本理念の下で、顧客ニーズの変化への対応を絶えず行っており、商品・サービス・販売チャネル・新規事業開発などの目に見える形での経営革新をおこしています。

 こうした老舗の取組みは、松尾芭蕉が提唱した俳諧理念・哲学の一つである「不易流行」にも通ずるところがあります。「不易」とは時代が変わっても変化しない本質であり、「流行」とは時代とともに移り変わっていく事象を指します。両者は相反する存在ではなく、むしろ補完しあい不可分な関係にあります。こうした、「不易流行」の理念は、老舗をはじめとする企業経営のあり方にも通ずる点が少なくありません。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)