独自技術・知的財産を秘密にしていては最大の受益者にはなれない その2

 知的所有権に固執しないで、まずシェアを確保し、ユーザーを増やしその後地位を獲得する戦略が徐々に増えています。今まではまず、権利を確保し、他社の権利を侵されないよう防御することが一般的でした。しかし、GoogleはLinuxでITシステムを構築し、Androidをオープンソース化することで圧倒的な優位性を獲得しました。

 サムスン電子は、Android向けのソフトを無償で提供し、その多くがGoogleによって採用されています。ソフトの新機能を知り尽くしているサムスンは、それによっていち早く新機能を搭載した最新機種を市場に投入できるなど、Google とともにAndroid端末のビジネスにおいて圧倒的な優位性を獲得できます。サムスンはAndroidを自社のビジネスに有利なソフトにすることができ、市場で圧倒的な優位性を獲得することになるわけです。

 日本でも、ノーベル賞を受賞した京都大学の山中伸弥教授らのiPS細胞に関する知財オープンの好例があります。京大では、iPSアカデミアジャパンという組織を設立し、知財を管理していますが、利潤を追求しない教育・研究機関、NPOには無償での知財の利用を認めています。これによって、iPS細胞関連技術の研究が世界中で急速に進んでいます。そして、iPS細胞を利用する多くの分野の勝った企業・研究者とともにiPSアカデミアジャパンと山中伸弥教授は常に最大の受益者であり続けます。

 まず権利を確保する、というのではなく普及させて実を実らせてから最大の受益者になる、このような新しいトレンドに注目していきましょう。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)