自治体病院が、診療材料の納入業者に消費増税分の値下げを強要する「買いたたき」行為をしていたことが明らかになりました。「県や市などが運営する公立病院」は、患者にしてみれば最も身近に利用する「行政サービス」のひとつですが、そこでなかば公然と消費税転嫁拒否行為がなされていたことになります。

 公正取引委員会が実施している消費税転嫁拒否行為についての調査で、自治体病院が注射針やガーゼなど診療材料の納入業者に対して、一律に商品の価格を3%引き下げるよう要請し、これを一部受け入れさせていた事実が認められました。
 自治体病院によるこうした行為は、消費税転嫁対策特別措置法が禁止する「買いたたき」(3条1号後段)の規定に違反するものです。

 医療は消費税が非課税のため、自治体病院・民間病院とも医療機関が受け取る診療報酬などには消費税分が含まれていません。このため病院は、診療材料を購入(仕入)する際には消費税分を含む代金を支払いますが、診療報酬(売上)で受け取る消費税はゼロとなります。企業の場合、「支払い消費税(仕入消費税)」と「受け取り消費税(売上消費税)」の差額を納税し、仕入消費税のほうが多かった場合には還付を受けることになりますが、病院はそもそも売上消費税がゼロのため還付を受けることはできません。これが「医療損税」といわれるもので、消費増税によって税負担が増す病院が、納入業者へ値引きを強要する要因のひとつにもなっているとみられています。
<情報提供:エヌピー通信社>