会計の分かりにくい項目の一つに

「現預金」と「剰余金」の違いがあります。

一般的に「現預金」とは手元資金のことで、

「剰余金」は過去の業績の蓄積のことです。


例えば、

1億円で設立した会社が

過去に3億円の利益を出していて、

さらにすべて現金化している場合、

貸借対照表<A>は次のようになります。
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(現預金)4億円
(資本金)1億円
(剰余金)3億円
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この時点では

「現預金」と「資本金+剰余金の合計額」は

ともに4億円で一致します。



この会社が手元資金の半分で

土地を購入した場合、

貸借対照表<B>は次のようになります。
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(現預金)2億円
(土  地)2億円
(資本金)1億円
(剰余金)3億円
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手元資金で土地を購入したので

「現預金」は2億円に減りましたが、

土地の購入は業績には直接関係ないため

「資本金+剰余金の合計額」は4億円で変わりません。


さらにこの会社が銀行から4億円を借りて
 
4億円の土地を購入した場合、

貸借対照表<C>は次のようになります。
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(現預金)2億円
(土  地)6億円
(借入金)4億円
(資本金)1億円
(剰余金)3億円
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借入金で土地を購入したので

「現預金」は2億円のまま、

資金の借り入れも業績には直接関係ないため

「資本金+剰余金の合計額」は4億円で変わりません。


3つの貸借対照表を比較すると

剰余金の額は

<A:3億円>、<B:3億円>、<C:3億円>

とすべて同じです。


一方、手元資金は

<A:4億円>、<B:2億円>、<C:2億円>

となり、Aが一番多くなります。


ちなみに、手元資金から借入金(有利子負債)を引いた

ネットキャッシュは

<A:4億円>、<B:2億円>、<C:-2億円>

となり、Cが一番少なくなります。


これら手元資金やネットキャッシュの違いは

土地(設備投資)の額や

<A:なし>、<B:2億円>、<C:6億円>

借入金(有利子負債)の額

<A:なし>、<B:なし>、<C:4億円>

の違いが原因で生じています。



つまり、現預金の額は

剰余金の額だけでなく

設備投資の額や借入金の額によっても

増減するという性質があります。

これが現預金と剰余金の違いを

分かりにくくしている原因です。



ちなみに、過去の業績の割に

現預金が少ない会社は

将来の業績アップに積極的なので

業績の推移に注目、

現預金が多い会社は

将来の業績アップには消極的なので

配当などの株主還元に注目、

と考えてもいいかもしれませんね。