A氏は、平成4年に死亡した被相続人の養子で、遺贈により遺産のすべてを取得し、申告しました。
ところが、この遺言について、被相続人の長女、次女、三女らが、無効であるとの訴えを提起し、同9年の最高裁判所判決で遺言が無効であることが確定しました。同判決を踏まえ、長女らは家庭裁判所に対し、A氏および被相続人の長男を相手に遺産分割を求める調停を申し立て、同18 年の審判で被相続人の遺産が分割されました。
 これを受けて、A氏は同4年に行った税務申告額が過大であるとして更正の請求を行いましたが、国税当局は「更正すべき理由がない」としました。これを不服としたA氏は、その全部取消しを求めて審査請求を行いました。
 争点は、A氏の行った更正の請求が相続税法32条第1号に規定する事由に該当するかどうかです。相続税法32条第1号では、未分割遺産が民法の規定による相続分または包括遺贈の割合に従って税額が計算されており、その後、財産分割により税額が異なることになった場合、更正の請求を行うことが可能とされています。
 A氏は、「申告時には遺言無効確認の裁判が係属中で、正式に遺産分割が終了した事実はない」とし、未分割遺産として遺言による包括遺贈の割合に従って税額を計算したことを主張しました。
 たしかに、同9年の最高裁判所判決により、A氏が申告を行った時点で遺産が未分割の状態であったことは認められます。しかし、A氏の申告では同判決により無効とされた遺言に基づき税額が計算されており、「民法の規定による相続分または包括遺贈の割合に従って課税価格が計算されていたものではなく、相続税法32条第1号の要件を欠く」として棄却されました。
<情報提供:エヌピー通信社>