(『オーナー企業経営者がやる気の出る「産業構造ビジョン」を1』よりつづく)

 ところで、リーマンショック後急激に需要が落ち込み、世界同時不況とまで言われるほどの経営環境下にあって、上場会社のトップはどのように経営の舵取りをしようとしているのかを確かめるため、筆者は年頭に当たり上場企業各社のトップの年頭挨拶を日経3紙(日本経済新聞、日経産業新聞、日経流通新聞)でチェックしました。

 その中から約70名分をピックアップしましたが、その多くはグローバル化、環境ビジネスの進化といった市場への対応、生産性向上、効率的な働き方の追求、ローコスト経営、無駄の排除、全社一丸、組織力強化といった経営管理・経営組織への対応を挙げています。これらの企業トップの年頭挨拶は、「時代のパラダイムシフトが起きていて、新しいパラダイムに合わせたビジョンと戦略を策定し、自ら変革しなければ生き残れない。そのためにヒト・モノ・カネの最適配分を考え、人材と組織の活用を通して儲かる永続企業へ変身する」と要約できます。

 「産業構造ビジョン」に話を戻せば、国は企業を強くする政策を強力に出さなければ日本の将来はないということであり、「産業構造ビジョン」こそ企業が自助努力で強くなるインフラを整備するものでなければなりません。政治家、役人、学者の中にも立派な人はたくさんいますが、経営の現場で体を張って会社の存続を懸命に考え、社員の雇用を守っている経営者がやる気をなくしては日本の将来はありません。特にオーナー経営者は体を張るだけでなく、家族と財産にまでリスクをかけています。

 企業と企業経営者にインセンティブを与え、やる気が出る「産業構造ビジョン」が策定されることを期待します。(了)

(記事提供者:アタックス 丸山 弘昭)