ホステス報酬から源泉徴収する金額を計算する際の基礎控除額をめぐって争われた裁判で、最高裁判所はこのほど、納税者の逆転勝訴となる判決を下しました。
 ホステス報酬から源泉徴収する税額は、「(報酬金額-政令で定める金額)×10%」の計算式で求めます。ここでいう政令で定める金額とは、5千円に「当該支払金額の計算期間の日数」を乗じて計算した金額です(所得税法施行例322 条)。今回の裁判では、この「計算期間の日数」について、「実際の勤務日数」であることを国税側が主張する一方、納税者側は「報酬の計算期間の全日数」とすべきであると主張。1 審、2審ともに国税側が勝訴していましたが、最高裁で一転、納税者側の逆転勝訴となりました。

 納税者が敗訴した東京高裁の判決は、「ホステスなど個人事業主が、その年の事業所得を計算する際に必要経費を控除できることから、源泉徴収においてもそれに倣うことが、『確定申告時の還付または不足分の納税による事務手続きを減らす』という源泉徴収制度における基礎控除方式の立法趣旨に合致する」とした内容です。必要経費は出勤に伴って発生すると考えるのが自然なため、高裁は「計算期間の日数」を実際の勤務日数とする国税側に軍配を上げました。
 ところが、最高裁はこの判決を破棄。計算期間の日数にいう「期間」とは、一般的に時適連続性を持った概念とされていることから、施行例322 条の計算期間は「支払金額の計算の基礎となった期間の初日から末日までという時適連続性を持った概念である」としました。

 このことを踏まえ最高裁は、「租税法規はみだりに規定の文言を離れて解釈すべきではない」という、いわゆる文理解釈を軽んじた東京高裁の判決を破棄差し戻しとしました。これにより、同施行例322 条の「当該支払金額の計算期間の日数」は、「5千円に各計算期間の全日数を乗じた金額」とすることが確定しました。