帳簿に記された仕入先が「真実でない」ため、仕入税額控除が認められないとした裁決が国税不服審判所で下されていたことが分かりました。

 貨物自動車での運送事業を営むA氏。A氏は業務に使う軽油の仕入先として業者3社の名前を記していましたが、3社は商業登記がなかったり領収書の住所表記の場所が存在しなかったりと実体のない会社だったため税務署は仕入税額控除の適用を認めませんでした。
 しかし、A氏は仕入先が架空の会社と疑う余地は全くなかったと主張。仕入税額控除には納税者が帳簿などの記載内容の真実性を調査し、確認する義務まで規定していないとして、国税不服審判所に訴え出ました。

 審判所はA氏の訴えに対し、①かつてから不正軽油の問題があることは公私の事実であり、A氏が軽油を購入した業者のうち1つは、不正軽油の製造販売を行っている業者の別名だったこと②領収書、請求書、および同社の社員と称する者の名刺に記載されている所在地がいずれも異なり、領収証と名刺に表示されている会社の種類も異なること③本件各軽油仕入先へ注文する際の電話番号が同一であり、仕入代金を集金していた者が同一人物であったこと――これらのことからかんがみると、それぞれの軽油仕入先の名称が真実のものかどうか社会通念上相当程度疑われる状態にあったとしています。そのうえ、平成17年課税期間には年間の取り引き件数は合わせて93件、額は1億1642万円にも上り、すべてが現金決算なため、請求人が積極的に確認するのが自然であると指摘しました。

 また、預り金的な性格を有する消費税は、特に正確な税額の把握が求められており、真実の仕入先の氏名または名称を記載することが要求されているとしているとして、請求人A氏の訴えを棄却しました(平成21年1月28日裁決)。