国税の“伝家の宝刀”である同族会社の行為計算否認規定について、その適用の是非をめぐり国税不服審判所で争われていたことが分かりました。

 審査請求を行ったのは、建築内装材を製造・販売するA社です。A社はaとbという親子が代表取締役に就任しており、bは関連会社B社の代表取締役でもありました。
 B社は共同経営者の使い込みなどで債務超過の状態にあり、A社に増資を要請。A社は要請に応じて3千万円を払い込み、全額を投資有価証券勘定に計上しました。その後、B社が精算となり、精算結了時に同額を投資損失として損金の額に算入し法人税を申告しました。
 しかし、税務署は「B社には合理的な再建計画がなく、増資時には解散に向けた行動をとっていた。A社が損失負担などをすることについて理由がなく、増資に合理性がない」として、払込金は払込時の寄付金と判断。同族会社の行為計算否認規定を適用して否認しました。
 これに対し請求人は「B社は関連会社であり、顧客や取引先への影響を抑えるため損失負担を行うには理由があった」と主張しました。

 審判所はこの争いについて、「A社とB社は資金融通関係もなく、増資直前に資本関係はなかったことからすると、請求人が増資を引き受けなければならない特段の事情があったとはいえない」とし、増資を行ったことは「純経済人の行為として不自然、不合理なものと認められる」と判断。「増資は寄付金とまではいえない」として原処分庁の判断を一部取り消したものの、法人税の賦課課税を結論づけました。
<情報提供:エヌピー通信社>