(「物づくりは人づくり その1」より続く)

 筆者は以前、「トヨタの人づくり」をテーマにしたパネルディスカッションのコーディネーターを務めたことがあります。トヨタの現場リーダーのOB3人が登壇し、先輩から自分たちが何をどのように教えられ、育てられたか、自分たちは部下をどのように育てたかを体験をもとに話をしていました。

パネルディスカッションでリーダーOBが話していた印象的な言葉を紹介しておきます。
・「者に聞くな物に聞け」:現地・現物・現実(3現主義)を徹底せよ
・「リーダーはやらせる勇気、メンバーはやる勇気」:難しい仕事にチャレンジすることで人は成長する
・「横展しよう」:お互いが切磋琢磨し、いいことはどんどんオープンにし、横(他の部署、工場)に展開しよう
・「とにかく思ったら『創意工夫』に提案しなさい」:日常業務でいいと思ったこと、気が付いたことは改善提案活動に出す
・「事前の一策、事後の百策」:問題が起きてからでは対処することが多くなる。事が起こる前にやれば一策で済む。問題はないか常に考えよ

 最近、筆者はトヨタグループ中核企業の社外監査役に選任されました。これを機会に工場の現場をじっくり見ることができました。工場の現場では、日常的に仕事の中から地道に改善提案をしていました。ある工場では技能オリンピックにチャレンジする若者をベテラン社員が手取り足とりで指導していました。

 日本企業の強みは、長期的視点に立った「人づくり」であり、細かなことにも気配りする物づくりの「こだわり」です。厳しい時代ですが、企業経営者は今一度「人づくり」に注力し、職場力を強化しなければなりません。(了)

(記事提供者:アタックス 丸山 弘昭)