近年、短期入院精密身体検査、いわゆる「人間ドック」はすっかり日本人の生活に定着しています。この人間ドックは、よく会社などで行われる定期健康診断に比べて検査項目が多く、詳細に身体の健康状態を把握できるため、いち早く病気の芽を摘むことができます。可能ならば毎年でも受診したいところですが、一般的な日帰りの人間ドック検診にかかる費用は、安いものでも3万円程度。高いものだと7~8万円かかるケースもあり、サラリーマンがおいそれと受診出来るようなものではありません。

 そこで、社員に対する福利厚生の一環として、一定年齢以上の役員および従業員を対象とした人間ドック検診を社内規定に盛り込んでいる会社があります。この人間ドック費用を会社が負担した場合、その経済的利益に対して所得税は課税されるのでしょうか。
 会社が負担する人間ドックのための費用は、原則として給与扱いとなります。ただし、①全従業員または一定年齢以上の従業員がすべて対象であること②検診内容が一般的なもので、費用が著しく高額でないこと――などの条件を満たしていれば、給与課税しなくても差し支えないとの取り扱いになっています。

 ところで、中には業務上やむを得ず指定日に受診できなかった社員に対し、後日、人間ドック費用相当の現金を支給する会社もあります。この場合、支給した現金が著しく高額でなく、支給を受けた社員がきちんと人間ドックを受診したのであれば給与課税の必要はないと考えてしまいがちですが、これは間違いです。金銭での支給である以上は給与扱いとなり、所得税の源泉徴収が必要となります。
<情報提供:エヌピー通信社>