長引く景気低迷で資金繰りが悪化し、未払いの役員賞与がたまってしまっているケースは少なくありません。こうした会社の中には、銀行取引などの円滑化を意識してなんとか未払い分を〝チャラ〟にしようとする動きもあるようですが、その場合、税務上の処理には注意が必要です。

 未払い役員賞与を支払わないこととする場合、源泉所得税の負担についても同時に消滅するものと考える向きもあるようですがこれは間違いです。税務上、未払い役員賞与を支払わないこととした場合には、役員がいったん役員賞与を受け取った後に企業へ役員賞与相当額を返納したものとして取り扱うため、未払い役員賞与に対する源泉徴収税額の納付義務は消滅しません。

 また未払い役員賞与は、支払い確定日から1年を経過した時点で支払いがあったものと見なして源泉徴収税額を納めなければなりません。この規定に基づいて源泉徴収税額を納めた企業の中には、その後、未払い役員賞与を支払わないこととした時点で納付済みの源泉徴収税額の還付を受けようとするケースも見られますが、これもNG。この場合も源泉徴収税額の負担が免除されるわけではないため還付は受けられません。
 このほか、未払い役員賞与を支払わないこととした場合、本来なら債務免除益が発生することになりますが、支払わないこととした理由が経営状況の悪化によるなど一定の基準に当てはまるときは、益金として計上しないことができます。

 ここで気になるのが、何をもって「経営状況の悪化」とするか。例えば今期赤字でも昨年まで黒字だった場合は認められないのではと捉える向きもありますが、当局では「赤字期間の長短ではなく、現実に業績不振であるかどうかで判断する」としています。
<情報提供:エヌピー通信社>