日本の税金は金銭納付が原則。ただし相続税は、延納を活用しても金銭納付が難しいような場合は、納付ができない金額を限度として相続財産を納める「物納」が認められています。
 物納できるのは相続税の課税価格計算の基礎になった財産のうち、①国債、地方債、不動産、船舶②社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券③動産――とされています。原則的に、①から③の順番で優先的に納めます。なお、美術品の美術館における公開の促進に関する法律で規定された「特定登録美術品」として登録されている財産は、一定の書類を提出することで優先順位に関わらず物納できるとされています。

 物納するためには納税者の申請が必要になります。平成5年度前後は1万件を超える申請がありましたが、現在は申請が減少傾向にあります。平成19年度には、18年ぶりに1千件を割り込み、383件の申請。20年度698件、21年度727件となっています。処理件数と処理金額を見てみると、21年度は914件・912億円でした。
 物納が減少している理由は、納税者が相続の事前対策をしていることや土地売却で金銭化することで、多くの納税者が金銭納付できている実態もあるといわれます。もうひとつ、物納制度の手続きが見直されたことも関係しているという見方があります。

 平成18年4月以後の相続からは、物納申請書と物納手続関係書類を同時に提出することになりました。これによって申請だけを先に行い、物納手続関係書類を提出するまでの間に物件売却や資金繰りを行う、いわゆる「とりあえず物納」が原則的に使えなくなりました。
 物納手続関係書類が用意できなければ、物納手続き関係書類提出期限延長届出書を提出することで期限を最長1年間延長できますが、延長期間中は利子税が掛かります。
<情報提供:エヌピー通信社>