(「外資系スーパーはなぜ日本市場に浸透しないのか?1」より続く)

 インストア・マーチャンダイジング(店頭で、市場のニーズにあった商品を、最も効果的な方法によって消費者に提示する手法)は、小売側のみの努力で成し遂げられるものではありません。メーカー、何より問屋とのリレーション構築が不可欠です。自分たちの基準を押し付けることなく、時間をかけて信頼関係を築いていく努力は日本のマーケットで商売をするうえでは必須のプロセスです。

 どんなに魅力的な経営手法、戦略を見せられても、泥臭い人間的な働きかけを欠かせてはいけません。

 現場に入るとわかります。年々問屋の形態は進化し、物流システムも高度化していますが、それがすべてではありません。「馴染みのないところとは付き合えない」「昔から交流のあるところを切り捨てるわけにはいかない」などといった、古い体質、感情論で物言う人も多いのです。

 かろうじてウォルマートは日本市場で生き残っています。子会社化した西友の手法も尊重し、日本の商習慣に合わせて控えめに戦略を打ち出しているからかもしれません。

 スーパーは、豊富で多種多様な商品を取り扱います。それゆえに、バイヤーの交渉相手も、関わる取引先も膨大になるはずです。バイイングパワーが発揮できない限り、小売側の力は失速します。市場、業界をリードするためには、「ペーシング」が不可欠です。つまり「相手に合わせる」ということです。外資系スーパーには、自分たちの基準、価値観を、それぞれの相手に合わせて調整する裁量が問われています。

 もちろん日本企業が外国へ進出するケースにおいても、理屈は同じです。(了)

(記事提供者:アタックス 横山 信弘)