経済取引の国際化に伴い、非居住者や外国法人に対する給与などの支払いが増加しています。こうしたなかで国税庁は平成22事務年度(22年8月~23年7月)に実施した調査で国際源泉所得税の課税漏れを1348件指摘、38億7400万円の追徴課税を行いました。

 租税条約に盛り込まれた源泉徴収の免除に関する特典を適用するために、虚偽の届出書を提出するといった手口で課税逃れをするケースがとくに目立つことから、当局は外国法人の経済取引の実態や、非居住者である外国人労働者の勤務状況、所得の把握について深度ある調査を実施しています。

 具体的な事例としては、虚偽の租税条約届出書による1億4千万円の課税逃れが摘発されています。この事例は次のような経緯です。X国にある親会社A社は、グループ法人でY国にあるB社に株式を100%譲渡したことから、日本国内のC社はB社の子会社となりました。日本とY国の間で締結されている租税条約では日本国内の法人がY国法人に配当を支払う場合、10%の源泉所得税が課税されることとなっています。ところがC社は、日本とX国の租税条約の場合はこの源泉所得税が免税になることから、すでに親会社ではないA社から租税条約に係る届出書を提出させるスキームで、配当の支払先をA社とし源泉徴収を免れていたというものです。
<情報提供:エヌピー通信社>