(「中小企業の事業承継における課題 その1」より続く)

 では、中小企業の事業承継における課題の中で、特に重要な課題とは何なのでしょうか?

 中小企業金融公庫総合研究所(現・日本政策金融公庫総合研究所)が実施したアンケート調査の結果に基づいて事業承継の課題をみると、「後継者の教育」をあげる企業が全体の72.7%と最も高い割合を占めています。次に高い割合を占めているのが「従業員などの支持、理解の確保」(36.2%)であり、「取引先、金融機関などの支持、理解の確保」(18.9%)も比較的高い割合を占めています。これらは「経営の承継」に関する課題です。

 これに対し、「経営者の個人保証、担保」(11.8%)、「相続税対策」(10.8%)、「株式(経営権)の後継者への集中」(5.8%)といったような、「財産の承継」に関する項目を課題としてあげる企業の割合は、相対的に低くなっています。金融、税制、財務面に関する事項は、事業承継にあたって重要な課題であることは事実ですが、これらの課題は実際に事業を承継する局面において出てくるものであり、現社長が健在なうちは喫緊の課題として捉えにくいことを示しているのかもしれません。

 事業承継の課題というと、「財産の承継」が着目される傾向にありますが、アンケート調査の結果からもわかるとおり、円滑な事業承継を推進していくためには、後継者をどのように育成していくか、後継者が従業員や役員などの社内の利害関係者や、取引先、金融機関などの社外の利害関係者から、支持・理解をどのように確保していくかといった「経営の承継」に関連する事項に対して、現経営者がより注力する必要性があることを示していると考えられるのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)