初めて、新興国向けの開発手法「リバース・イノベーション」を成功させたのは、米国の大手電機メーカー、GE(ジェネラル・エレクトリック)です。中国の病院では、米国製の大型で高価な医療機械は、設置場所や金銭的なことが障壁になり購入できないところが多くあります。そこで、GEは中国の事情に適した、格安で小型な超音波装置を開発し広めました。さらに、その技術を自国に持ちこんだのがリバース・イノベーションの始まりです。

 日本では、東芝の薄型テレビ「Pシリーズ」が事例としてあります。この商品は、もともとはベトナムで開発されました。現地は停電が多く、テレビを楽しんでいても途切れてしまうことがあります。そのなか、東芝は、ノートパソコンで培ったバッテリー技術をテレビに応用し、停電が起きても消えないテレビを開発し、現地の人たちの生活に役立ちました。

 そして、この技術は、日本が原発事故の影響で電力不足が懸念されたとき国内に持ちこまれ、新製品誕生に至ったのです。国内開発期間はわずか2ヵ月といいます。

 リバース・イノベーションのメリットは、現地に合わせた製品を開発するので、現地の人たちが欲しいと思う商品が生まれること。そして、メーカーにとって重要課題である開発期間の短縮ができる点にあります。加え、同じ技術を新興国だけでなく国内や他の先進国に転用することで、一機種当たりの開発費も下がっていきます。

 リバース・イノベーションは新興国での売上向上と開発費削減を両立させることから、今後、ますますの広まりが期待されています。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)