なんとしても、アメリカは財政の崖を回避しなければなりません。そのために、いくつかの対応策が存在します。ひとつは、税法の改正が挙げられます。ただし、今のところ、どう改正するかで共和党と民主党の意見が分かれています。共和党はブッシュ減税の全面延長を主張しているのに対して、民主党のほうは、年収25万ドルを超す富裕層への減税打ち切り(実質増税)を唱えています。

 アメリカの議会は日本と同様に、下院と上院で「ねじれ」を抱えており、両党の意見を一つにまとめるのは難しいことが予想されます。そこで、現在は減税を3~6カ月間延長し、その間に妥協策を探るとの見方が浮上しています。

 そのなか、オバマ大統領は「財政の崖」問題回避に向けて、共和党の下院議長らと超党派の合意案作成に向け、本格的な協議を始めました。今後は、オバマ大統領が提唱する高所得者層への増税に、共和党がどこまで妥協できるかが争点となります。ただし、これも共和党の出方は不透明で、財政の崖回避に向けた道筋は、この原稿の執筆時点(11月22日)では明確になっていません。

 民主、共和両党が税法や予算管理法の改正で12月中に合意できるのか、問題が片づくまでの間、財政の崖の回避に悲観論が強まれば、景気にマイナスとなり、さらに株安を招きます。当面、金融緩和路線を続けて応急処置をとることになりそうですが、この方針では、結局は長期金利の低下とドル安につながり、景気の後退につながります。日本をはじめ世界の経済に影響する財政の崖問題、どのような解決方法に落ち着くのか目が離せません。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)