では、米国において、政策金融が連邦政府による保証と州政府による融資や保証による政策金融支援が併存している背景は何なのでしょうか。

 第一に、米国の連邦政府が「小さな政府」を志向している点があげられます。米国は、もともと独立して存在した州の連合体である「合衆国」であることから、州の独立性が強くなっています。また、連邦政府自身も政策による市場への介入は最小限とし、可能な限り市場経済に任せる「小さな政府」を志向しています。

 第二に、中小企業経営者のマインドがあげられます。米国では、経営者の独立志向が強く特に連邦政府の関与を嫌う傾向にあります。また、市場主義を志向するビジネス社会全体の風土から、政府介入は最小限にすべきとの基本的考え方が根付いているのです。

 第三に、直接融資向けの原資の確保が困難な点があげられます。米国においては、日本の財政投融資のような直接融資向けの財源が存在せず、政策金融の財源は税金のみとなっています。こうした限られた予算の中で、連邦政府は最大限の効果を発揮する必要に迫られているのです。

 以上のような背景から米国中小企業庁(SBA)においては、限られた予算の中で最大限の効果を発揮し全米に一律のサービスを提供する役割を期待されている中で、保証中心の金融支援を実施しています。そしてその一方で、州政府が各州の様々なニーズに応じた多様な政策金融手法を展開しているのです。

 このように、米国における政策金融制度が現在の形となっている背景には、米国の政治・経済的要因や歴史的経緯などが密接に関連しているのです。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)