「キャッシュフロー経営」という言葉をよく聞きます。「キャッシュフロー」という言葉が日本で流行り出したのは、2000年に行われた会計の大改正のときに上場企業の財務諸表に「キャッシュフロー計算書」が導入されたことによります。

 しかし、そのときまで、日本の経営にキャッシュフローという考え方がなかったのかというと、そんなことはありません。それまでは、「資金繰り」とか「資金運用」という言葉で表現されていました。

 「黒字倒産」とか「利益合って銭足らず」というような言葉に象徴されるように経営の生殺与奪の権利はキャッシュが握っていることは以前から常識でした。
どんなに利益が出ていても、手元資金がなくては債権者にカネを支払らえず倒産してしまいますし、いくら貸借対照表に自己資本が積み上がっていても、資金がなければ設備投資はできません。このようにキャッシュの重要性は十分認識されていました。ただ、正式な財務諸表書類として「キャッシュフロー計算書」が登場したことで、その重要性が再認識されたわけです。

 そこでキャッシュフロー経営の登場になるのですが、キャッシュフローを増やすにはどうしたらいいのかが経営に問われます。キャッシュフローを増やすための第一の方策はいうまでもなく、利益の向上です。それは当然のことですが、利益の向上は経営そのものの課題でありキャッシュフロー経営とは発想の次元が異なります。キャッシュフロー経営とはキャッシュそのものに注目するものなのです。(つづく)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)