なぜ、新興国通貨下落が起こったのか、詳細な理由として、次のように言われています。一つはアメリカの量的緩和の縮小が挙げられます。これまで、米連邦準備制度理事会(FRB)は量的緩和を実行し、米長期金利を押し下げてきました。対する新興市場国の金利は相対的に高い傾向にあり、この高利回りを求めて資本が新興国に大量に流れ込んでいました。ところが、量的緩和の縮小でアメリカの金利が上がれば、新興国から投資資金が流出する可能性が高まります。これが通貨の下落につながりました。

 中国経済の減速も懸念材料の一つです。中国は年2桁の伸びを続けてきましたが、その成長は減速の傾向にあります。とくに、今回の新興国通貨の下落は、中国の経済指標の一つ、「製造業景況感」の悪化が引き金になりました。

 そもそも、新興国の通貨安の根底にあるのは貿易赤字です。アルゼンチンなどは、貿易赤字により外貨準備金が不足しがちで、今回のような下落が起きても、十分な為替介入ができません。これにより、さらに通貨の下落が進む構造になっています。

 日本への影響は円高が考えられます。ドル円相場は、2013年12月31日は1ドル105円39銭でしたが、今回の新興国通貨安で1ドル102円まで上昇しました。これにより、24日、日経平均株価の終値は前日比304円安、一ヵ月ぶりの安値水準をつけました。現状、輸出企業の多くは、余裕をもって為替レートを想定しているので、すぐに窮地に立たされるわけではありません。ただし、安心は禁物です。今後も通貨の変動を意識しておく必要があります。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)