では、産業観光の推進による観光振興を行うためにはどのような取組が求められるのでしょうか。ここでは岡山県倉敷市玉島地区における産業観光推進の事例をみていきましょう。

 玉島地区は倉敷市内でも倉敷地区、児島地区などと比較すると観光資源に乏しいといわれていました。そのような状況の下で地元コピーライターのA氏が産業観光推進アドバイザーとして玉島地区の産業観光の推進に乗り出しました。

 まず、A氏は玉島地区の中小企業者を1軒ずつ訪問し、工場見学の協力を要請していきました。協力企業の数は当初の14社から50社へと増加していきました。こうした現場視察や中小企業へのヒアリングに基づき、A氏は観光のストーリーを組み立てていったのです。

 A氏は、企業側に産業観光への協力を仰ぐ過程で、来訪者に現場を見せて語りかけることで、来訪者に楽しみながら地域にお金を落としてもらうという産業観光の意義を理解してもらいました。こうして2005年に玉島商工会議所によって初めて「産業観光バスツアー」が開催されました。

 玉島地区で開始された産業観光の取組はその後倉敷市全体へと広がりを見せ、2010年には玉島、児島の両商工会議所に倉敷市などが加わって「産業観光ツアー連携委員会」が発足し、官民連携による産業観光を推進する体制が構築されました。

 このように、産業観光の推進には企業側の理解や協力に加え、行政、地域住民との連携が不可欠となります。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)