実際にデフォルトに陥るとなると、理財商品を購入した個人投資家が損失を被るだけではありません。デフォルト発生時には、不動産開発業者は当初予定していた土地の値上益が得られず、経営破たんする事態に及びます。結果、シャドーバンクはもとより、こうした不動産会社に融資していた銀行にも損失が及びます。

 中国の理財商品の問題の一つは、中国政府当局がこうした理財商品などが全体でいくらあるのか、そのなかで債務不履行になる可能性がどのくらいあるのか、正確に把握しきれていない点にあります。現行の融資総額は、ほとんどが試算です。予想以上に、不良債権の額が膨らむ事態も起こり得ます。

 ただし、中国当局も手をこまねいているだけではありません。この事態を乗り越えるため、4月に対策を打ち出しました。デフォルトを起こりにくくするため、銀行監督局は中国内の信託会社に対して、理財商品の償還や増資に備えるように求めました。

 さらに、中国政府は、理財商品の販売を登録制にするなどの規制を打ち出し、融資の実態を把握する体制を整えました。もう一つ、中国企業は理財商品のデフォルト懸念をふまえ、相次いで社債などの発行を見送りました。こうした警戒感は、実際にデフォルトが生じたときの損失を小さくします。

 これまでも、リーマンショックやアジア通貨危機など、世界規模の経済危機は何年かの周期で訪れています。中国の金融リスクなど、経済危機を起こす要因を知っておくと、実際に危機が起こったときにいち早く対処できるので、情報として頭のすみに置いておくことが大切です。(了)

(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)